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flight record

特に何ができるわけでもないが、飛行機が好き。 雑記を中心にした、いつまで経っても個人的興味の範疇を超えないブログ。

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『雪の狼(上・下)』 グレン・ミード

 好きなところと嫌いなところがある小説。だが自分が読んだ中ではトップクラスに面白く、また目標としたい作品だ。冷戦時代の米露を舞台にした、極秘作戦『スノウ・ウルフ』を巡る男女の物語。

 俺は苦手な食べ物は先に食べる方だから、まず嫌いなところから入ろう。この作品の最大の欠点は御都合主義だ。主人公らの三角関係の帰結、敵の解りやすいほどの悪役ぶり、実は○○だったと知るや否や途端に性格が変わるほど仲良くなる二人、現実的に考えれば最も難しい関門が割と簡単にスルー、など、作為的な場面が多い。特に人間関係では顕著だろう。二人の男と一人の女の三角関係をどう解消するのかと思えば、さしたる激動も変遷もなくあっさりステレオ式に一人がくっついてしまう。女が男の一人を選んだ理由もよく解らない。「作者の都合によりベッドシーンに入りました」か、もっともらしい理屈をつけると「不安なときに一緒にいた方に女は惹かれました」程度だろうが、どうにも納得しかねる。ヒロインの情動としては、あまりにもぞんざいだ。
 また、その男達の扱いも同様である。女とくっつく方は「格好良さ」や「強さ」を前面に押し出し、残った方は嫌われ役を押し付けられた挙句、あまりにも報われない形で物語から途中退場することになる。一言で言うと書き方が逆なのだ。前者の短所は「とりあえず脇に置き」、後者の短所は「前へ前へ」――これでは、二人を冷静に比較するなと言っているようなものだ。(ちなみに俺が後者の男の方が好きである。自分の立場を正確に把握し、人を統べる人間としての清濁を合わせ持っている。そのくせ理想家だったり。)
 現場で戦うヒーローと大局を見据えるリーダー――その役割分担は非常に正しいのだが、後者の立ち位置だけを狂わせてヒーローを引き立てるは卑怯だ。単純な側面としてのヒーロー像をメインに据え、ましてやヒロインをくっつかせようなんて構図は承服できない。

 だがそんな俺の意見も、長所の前には呑まれてしかるべきなのかもしれない。該博な知識の下、さまざまな立場や価値観の下で冷戦期を生きる人間らが非常に緻密に描写されている。「感服しました」といってもいい。壮大で、且つ現実味を帯びた事件を実際の記録に正確に沿って紡ぎ出されている。事実との差異がどれほどあるのかは俺には判断できないが、読者を完全に騙しきるレベルでストーリーが展開していく。だから面白く、自分がかの時代に暮らしているかのような錯覚すら抱いてしまう。
 戦争が絡む小説を書きたいなら、必ず読んでおくべき作品だ。

| 書籍 | 17:31 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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