原作第一巻『スカイ・クロラ』をベースに、とても丁寧に作っていると思った。
原作の雰囲気を生かしたまま具体化して、一本の映画としての再構築した感じ。
内容も視聴者寄りで、初見の人が観たときに思うであろう不可解さをかなり緩和しようとしている。ただそれでも、合わない人にとっては徹底的なまでに合わないだろうけど。
原作を壊さず、作品を殺さずに解りやすく作った印象。テーマをキルドレの無限ループ性に絞って作ってあるので、二回目の視聴でもう一度気付かせてくれる点もあり。解釈の多様性はやや失われてしまっているけれど、充分なレベル。
「スタッフは『スカイ・クロラ』をこういじったのか」、と考えながら観ると楽しいかもしれない。
兎にも角にも、原作に魅かれた人なら観て全く損はない映画だと思う。
原作を読んでいなくても、押井守好きや飛行機好きの人たちを初め、きちんと人にオススメできる作品に仕上がっている。しつこいけど、好き嫌いは別として。
個人的に気になった点といえば、
・空戦シーンの印象が
良くも悪くも強烈。全てを呑み込むような迫力と演出は素晴らしいけど、淡々とする地上シーンとの折り合いが悪いとも取られるやも。
・予想外の全翼機の登場に興奮した。下方にすらっと伸びた垂直尾翼がどう考えてもおかしいけど、映像としてはよく映えている。ここら辺は押井守のこだわりもあったとかなんとか。
・カンナミとクサナギの声優二人、趣旨を読み取れていないと「ただの残念な演技」としか取れない。これはこれでアリだけど、どうかと思うよ――という評価で留まるんじゃないかと。
・トキノがやっぱりトキノだった。それも含め、三ツ矢や湯田川のようなサブキャラの動かし方が予想以上に光っていた。
特に、三ツ矢と初めて会話する場面(でのトキノのギッコンバッコン)は、本作でも五本の指に入るほど名シーンじゃないだろうか。 ・後半から終盤にかけて。原作を再現か……と思いきやの裏切り展開。随分ストレートだなぁと思ったけど、結果としては好印象。
さすがに原作通りじゃきついかと。 ・結末。やはりストレートで、意外性はない。でもこの映画では理想的な形だと思う。なによりも、押井守の作品としてはトップクラスに解りやすいんじゃなかろうか。
(余談だけど、エリア88のラストと一部重なるものがあって無意味にグッと来た) ・エンドロールの
岡部いさく。もはや定番のお人。
とりあえずネタバレ以外ではこんな感じ。色々と溢れて、まだうまく整理できず仕舞。
しばらく良い飛行機アニメを見ていなかったので、押井の『スカイ・クロラ』は非常に良い栄養剤になった。DVD買ってしまうんだろうか。買ってしまうんだろうなぁ。
まだ前売券が余っているので、都合がつけばもう一度観にいきたい。